M-1には法が無いので、5分ネタをやったりわざと準決勝落ちたりする和牛を、我々は裁くことができない【考察】
- ヒジカタ
- 2019年12月5日
- 読了時間: 11分
更新日:2019年12月7日
こんにちは。約一年ぶりの投稿になります。
今年も熱い熱いM-1グランプリの季節がやって参りまして、年に一度の祭典ということでお笑いファンは史上最高の盛り上がりを見せています。
予選の結果が出た瞬間は、進出コンビの名前がずらずらとTwitterのトレンドに浮上しますね。また、準々決勝の敗者復活「ワイルドカード」はGyaOの予選動画の再生人数によって決まるということもありファン同士がプライドをかけ火花を散らすその様相は凄まじいものでありました。
さて、今年も一時も目を離すことが出来ないM-1グランプリですが、私は12/4の準決勝ライブビューイングに行ってまいりました。
今回の記事はその感想と、過去大会で3年連続準優勝というとんでもない結果を残している「和牛」というコンビについて、私の考察を綴ろうと思います。
まず準決勝全体の感想。
ネタを披露した全ての組が、最高に面白かった。25組まで選ばれている時点で実力は尋常ではないし、あの、想像を絶するような緊張感の中で人を笑わすその逞しい姿に最大限の拍手を送りたい。皆さんほんとに尊敬します。大好きです!!
激戦を勝ち抜き見事決勝に進出が決まったのはこの9組。ここに敗者復活の1組が加わり、決勝は全10組で戦うことになる。( )は決勝進出の回数。
発表順これで合ってるかな…?
インディアンス(初)
ミルクボーイ(初)
オズワルド(初)
見取り図(2)
かまいたち(3)
からし蓮根(初)
ニューヨーク(初)
ぺこぱ(初)
すゑひろがりず(初)
まさかの、9組中7組が決勝初進出!
昨年ラストイヤーであったスーパーマラドーナ、ジャルジャル、ギャロップ、プラス・マイナス……などが卒業したことによって準決勝で燻っていた人達が出てくることになるだろうと皆予想していたはずだが、結果は私の想定を大きく上回った。2017→2018のファイナリストの顔ぶれにあまり変化がなかっただけに、よりいっそう新鮮に感じられる。
ファイナル常連となりつつある優勝候補「ゆにばーす」が準々決勝で敗退するなど、波乱の展開となっている今大会。決勝進出者の名前が呼ばれた時、皆がこう思ったはず。
「え?和牛は………????」
和牛が落ちた。M-1復活以降、4年連続決勝進出、うち3回は準優勝というキモすぎる成績を残しているバケモノ漫才師「和牛」が、なんと今年は準決勝敗退。
最高傑作だと称された自分たちの過去の漫才を毎年驚異的なパフォーマンスで塗り替えていく、まさにM-1のヴォジョレ・ヌーヴォー。
なのに、今年の準決勝はあまりウケてなかったぞ…?今年のは熟成がイマイチかな?
と、思ってる方もいるんじゃないでしょうか。
しかし、ライブビューイングを見た私はそうは
思わなかった。寧ろ、彼らには今まで以上に何としてでも勝ってやるという強い意志、青い炎が見えました。
(準決勝ライブビューイングは、SNSでのネタバレは厳禁ということで、ネタの内容には触れることなく書きますのでご安心ください。)
和牛の準決勝の出番は大トリ。満を持して登場した彼ら。毎年決勝のネタをこの準決勝で披露して、とんでもなくウケていると聞く。
いざ始まってみると……あれ?
これ、私でも知ってるレベルの「劇場でむちゃくちゃ擦ってるネタ」では………??????
えっ、まさか、いや、そんな、そんな訳ない、そうと見せかけて後半に驚きの展開があるに決まっている!
「もうええわ」
えーーーーー?!?!
え?!本当に言ってるのか?!
さっぱり意味がわからない!
なんで?どうしてこの有り様?こんな事したら
こんな事したら、、、、、、、、、
落ちちゃうでしょ?!?!?!
???
あれ?
まさか、
もしかして
「わざと落ちようとしている」……?!?!
ここで、にわかには信じ難い仮説が立ってしまった。優勝候補筆頭の和牛が「わざと準決勝落ちようとしている」可能性がある、いや、そうとしか思えなくなってしまったのだ。
それではここから「和牛が準決勝でわざと落ちて、敗者復活枠から優勝を狙う」計画
について考察します。
自身のコント漫才に磨きをかけ臨んだ2017年、優勝まであと一歩のところでとろサーモンのしゃべくり漫才の「爆発」に敗れてしまった。
その反省を踏まえ翌年2018大会では、得意とするコント漫才に「裏切り」の要素を後半でしっかりと配置し、観客の驚きと拍手を誘ったネタを披露したが、勢いがあって手数の多い霜降り明星に逃げ切られ、惜しくも優勝を逃した。
今年の和牛は、昨年の敗因である「勢い」「手数」の部分を圧倒的に強化してくることは間違いないでしょう。
また2018大会の後、本人たちは「自分達のやっている漫才ではM-1では優勝しにくいのだと思う」とコメントしており、自身のコント漫才の手数やM-1との相性に限界を感じている可能性があります。
加えて、今年和牛はテレビでしゃべくり漫才を選んで披露していたこともあり(ENGEIグランドスラムなど)、今大会はハイテンポなしゃべくり漫才で勝負するつもりなのではないかと私は予想します。
しかしどう考えても準決勝ではしゃべくりで本気を出しているようには見えなかった。
和牛が「わざと落ちて敗者復活から優勝を狙う方がよい」と考えるのには以下の理由があります。
①ライブビューイングに来たたくさんの人達に決勝当日まで勝負ネタを隠しておくことができる
今年はM-1グランプリ初の試み「ライブビューイング」がありました。
全国の映画館で準決勝の様子が見られるというもので、たくさんのお客さんが詰めかけました。
いいシステムのように思えますが、これには出場する芸人さんにとってデメリットがあります。
・準決勝で披露したネタはほぼ必ず、決勝(1本目あるいは2本目)でやることになる
・ライブビューイングをしなかった昨年以前と比べ、決勝の観覧に来るお客さんの中で「準決勝を見た人」の数が確実に増える
→つまり当日「ネタを知っているお客さん」が会場に増えてしまいます。
初見でないネタは笑いの量が減ってしまいますから、当然ウケにくくなります。
その点、準決勝で勝負ネタをやらずにわざと落ちて敗者復活から優勝を狙うやり方は、ライブビューイングに来たお客さんにも勝負ネタを見せなくて済みます。準決勝時点で手の内を明かしてしまった他のコンビと比べて「初見のインパクト」「勢い」を増強するための作戦の一つと言えます。
②勢いをつけて流れを引き寄せることができる
敗者復活から勝ち上がったコンビは、野外のステージから皆に背中を叩かれて激励され、見送られながら会場へ向かいます。既に1勝した状態で本戦に臨むということで、ストーリー的に「流れ」はそのコンビに来ている感じがあります。
過去にはサンドウィッチマンやトレンディエンジェルがその形で優勝しましたが、敗者復活で勝って舞い戻ってきたという高揚感が自然と番組の中にドラマを作るのです。
昨年霜降りに敗れた「勢い」をどのように強化するかと考えた時、彼らは、ネタ以外の部分での演出も自らに勢いをつけるために必要だと考えたのではないでしょうか。
今年も例年通り順当な進出では、また準優勝に終わってしまうのではないか。そういった懸念から考えた大胆な作戦かもしれません。
更に、敗者復活はお客さんの投票式。実力、実績はもちろんですが、現在の和牛はとんでもない数のファンを持っています。
単独ライブツアーの動員や、よしもと男前ブサイクランキングの投票数を見ても和牛が今たくさんの人間を動かす力を持っているのは明らか。
この「わざと落ちる」計画は当日に3回勝たないと優勝できない(勝負ネタが3本必要?)というリスクもありますが、こういったそれなりの勝算があっての決行だと、私は考察します。
和牛は誰よりもM-1優勝の難しさを痛感しているし、勝つためならいかなる手段も厭わないコンビです。
楽屋では、分厚い進行の台本を「発言の一つひとつが順位に影響する」と言って丁寧に読み込んでいるとのこと。
また、昨年の大会で話題になりましたが、決勝は時間超過ペナルティがないというルールの隙をついて、5分尺でネタを仕上げているという疑惑。Twitterではダメでしょと言ってる方も多かったですね。
しかしタイトルにある通り、M-1には法が無いので、我々はそんな和牛を裁くことができないんです。
今年の和牛はファン共々巻き込んで総力戦で戦おうとしている。
これに気づいた時、私は戦慄が走りました。
ネタを仕上げるだけでなくM-1のシステムの全てを利用して、優勝を手繰り寄せようとしている。怖すぎる。
さて、そこで気になるのが、良き同期、良きライバルの関係である「かまいたち」です。
ラストイヤーである今年、優勝するのは「僕らか和牛」とゴッドタンでも語っていた彼ら。
それなのに、いざ結果が出てみるとファイナリストは若手ばかり!和牛がいない!
彼らも想定外の面子に居心地の悪さを感じているかもしれません。
しかし和牛が敗者復活を勝ち上がって決勝の舞台に立った時、かまいたちはその勢いに制されることなく優勝を勝ち取ることができるのか……?!
【12/6追記】
このブログをTwitterに投稿したところ、「これがもし本当だと仮定するなら、和牛は今年がラストイヤーくらいの気持ちなのだろう」
というコメントを頂きました。
これを受け、「ラストイヤー」について私なりに考えていたところ、和牛が今年のM-1を背水の陣で戦うモチベーションを見つけてしまいましたので、記載します。
・同期のコンビと戦えるのは今年が最後である
今回準決勝に勝ち残っているメンバーで、先ほども挙げた「かまいたち」や、「天竺鼠」は、和牛の養成所からの同期です(大阪NSC26期)。
この代は仲が良いらしく、番組、ライブの共演だけでなくプライベートやSNS上でのやり取りも多いことで有名。
「かまいたち・天竺鼠・藤崎マーケット」
「アキナ・和牛・アインシュタイン」
でそれぞれユニットを組んでイベントを行ったりしている。(※厳密にはアキナの秋山さん、アインシュタインの稲田さんは、個人の芸歴は同期ではありません)
「かまいたち」「天竺鼠」「藤崎マーケット」の3組は、売れるのが早かった組。
「アキナ(元ソーセージ)」「和牛」「アインシュタイン」は、遅咲き組(結成が遅かったり、下積みが前者より長かった)。
今でこそ誰もがその実力を認める漫才師となった和牛だが、大阪の劇場(baseよしもとなど)で活動していた頃は、同期のかまいたちや天竺鼠、藤崎マーケットらがどんどん自分たちを置き去りにして売れていく様に悔しさ、劣等感を抱いていたという。
そんな、和牛にとってかつては見上げる存在であった同期の「かまいたち」「天竺鼠」は、今年がラストイヤー。和牛自身は同期の中でも結成が遅いので現行ルールなら来年もM-1に出場可能。だが、この大会が終わったら、今後賞レースで彼らと戦う機会は無くなるでしょう。
同じ大阪の劇場で若い頃から互いに切磋琢磨してきた仲間であり、最大のライバルである同期を蹴散らして優勝する。これが和牛にとっての「最っっっ高の名誉」なのではないか。
それを実現するチャンスは今年が最後。そう考えると、今年こそは、何がなんでも優勝を掴み取りたいところなのです。
他にも、もうひとつ。こちらはおまけ程度に捉えていただければ有難い情報なのですが…
・準決勝の結果が出てから2人とも丸1日以上ツイートをしていない
Twitterを見ていればわかりますが、賞レース予選の結果が出た直後の芸人さんは皆興奮しています。
受かったコンビなら「決勝行きました!!やったー!!頑張ります!!」、落ちてしまったコンビなら「準決勝応援ありがとうございました。まだ敗者復活がありますのでよろしくお願いします!!」のようなツイートをしている方、よく見かけると思います。
私の知る限りでは、この「テンプレツイート」は割と合否いずれの場合でも結果発表に感情が昂っているため、「!」がたくさんついていることが多いです。
ちなみに、受かった芸人さんは喜びをそのまま素直にツイートするのに対し、落ちた芸人さんは結果にショックを受けた後気持ちが落ち着いてからファンへ向けて体裁を整えたツイートをしなければいけないので、当落発表からツイートまでの時間が合格者よりも空く傾向があります。これは余談。
……ということで、落選した和牛のTwitterを見てみると、2人とも全く更新していません。
おそらく準決勝の結果に対して「情緒が大きく振れていない」し、少なくとも「自分たちのM-1はまだ終わっていない」のではないかな……
川西さんが準決勝後初のツイートは12/6、ギャロップ林さんのツイートの引用RT。M-1には全く言及なし。SNSから全てを推し量ることはできませんが、私はどうもこの様子から「準決勝の落選は想定内」というような余裕を感じてしまった。
今後のメディア等での言動にも注目です。
正直な話、私は和牛のライブには全然行ってません。
なので、お金を落とすほどの熱心なファンではないんですが、M-1決勝の規約とペナルティがしっかり定まっていない中で彼らが批判されたらちょっとかわいそうだな〜という思いがあります。
「M-1には法が無いので、5分ネタをやったりわざと準決勝落ちたりする和牛を、我々は裁くことができない」という文言をタイトルとしているのはそのためです。
確かにこういったルールの隙をつくような戦略的なやり方に対しブーイングの余地があるのは否めないけれども、悪いのは規約やペナルティをはっきり設けない運営なので…。
最後に、めちゃくちゃ個人の意見です。和牛は「M-1戦士」であり「タレント」であるけど、東京のテレビバラエティで"魂を研磨すること"を回避しているから、どうも「芸人」として見ることができないんですよね。もっと汚ねえ〜仕事や、泥臭い姿を見せてくれないと!
という、個人の意見です。
さーーーーーーて!!!!
M-1〜〜〜〜〜〜!!!!
楽しみだぁ〜〜〜〜〜!!!!!
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