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M-1グランプリ2018ファイナリスト決定!徹底考察!

  • 執筆者の写真: ヒジカタ
    ヒジカタ
  • 2018年11月30日
  • 読了時間: 13分

更新日:2018年12月1日

前回の記事で和牛について書いてしまったのですが初めから全ファイナリストについて感想を述べる予定でした。

個人的に贔屓にしている漫才師はいたりいなかったりですがなるべく私情挟まず書くつもりです。でも若干の独断偏見はご了承ください、個人のブログなんで。


1206 和牛

決勝進出4回目。2年連続準優勝で、最有力候補と言われる。

漫才コントで、昨年は伏線回収という斬新なスタイルだったが今年もまた新たな試みがあるのか?例年の様子を見ている限り一本目の審査は固そうだが、最終審査での爆発力不足がネックか。詳しくは前回の記事をご覧ください。


349 霜降り明星

決勝初進出。せいやさんの自由に動き回るボケに粗品さんがズバズバとつっこんでいくスタイル。ライブで漫才を拝見したこともあるのだが、まあこれが面白い。二人ともR-1決勝に進出していたりと個々の面白さまでお墨付きのコンビである。

私は粗品さんの痒い所に手が届くようなツッコミが好きだ。ボケの動きだけでは何をしているかわからないところもあるが、そこをきっちりと笑いにする。


少し気になるのは、一部ツッコミの例えの理解に時間を要するところで、ボケ→ツッコミまでが早すぎてお客さんの理解が追いついていないことがある点。

校長の銅像のくだりでの「11、12、13、14、冷房強すぎる!」とか、言ってることは面白いんだけれどネタをかなり能動的に見ていないと笑いそびれる箇所がある。彼らのネタのことをわかっている人からしたら大した問題ではないかもしれないが、一般の何もわかってない層(特に年配の人)には厳しいと思う。ネタが伝わり切らず、「よくわからなかった」となってしまわないことを祈る。

あとお馴染みの「お前人殺したんか!?」も、ハマる時とハマらない時の振れ幅が大きい印象。バシッとハマれば大きな爪痕を残せるかもしれない。声のトーン、間の取り方のごく僅かな違いだけでウケが全然変わってくる。これが難しいのだ。


粗品さんのツッコミがどこまで会場のお客さんと審査員にハマるか、どこまで伝えきることができるかが問題かな、という感じ。まだまだ若いし、初出場ということで、気負わずのびのびとした漫才を期待したい。



2852 ゆにばーす

決勝進出2回目。昨年トップバッターで、結成5年目と思えない素晴らしい漫才を披露し高い評価を得ており、審査員の大吉先生に「トップでつけられる最高の点数」とまで言わしめた。男女コンビでありながら、ありがちな恋愛テーマのネタに終始せず二人のキャラクターを生かした台本になっているところが魅力だ。

システムが新しいとか、ワードセンスが、というような特徴はないが、ネタのわかりやすさ、一般への伝わりやすさはファイナリストの中でも上位に入るのではないかと思う。ボケのはらさんのハスキーで一度聞いたら忘れられない声とそれに負けないくらい力強い川瀬さんの押し切るようなツッコミ。声のトーン等コンディションに左右される部分もあるが、リスクを抱える「ワードセンス勝負」のコンビと比べると安定して笑いが取りやすい。今年はトップでなくもっと後の出順でネタができれば最終決戦進出も見えてくるだろう。


彼らは若手であるが出場回数の多い常連勢と戦える力があると思う。最終決戦に駒を進められれば、下手したら和牛・スーパーマラドーナより審査員の胸を打つ爆発力のある漫才ができるかもしれない。しかしまずは一本目で上位三組に入らなければいけない。絶妙なスピード感とボケ数の多い常連勢に一本目の審査で勝てるかが問題だ。


2197 見取り図

決勝初進出。活動拠点が大阪で、なかなか全国区のテレビで見かけないので東京生まれ東京育ちの私はあまり馴染みがなく、顔と名前を知っている程度だったが決勝進出を機に彼らのことを調べるようになった。

淡々とボケ続けるリリーさんと、コテコテの関西弁のツッコミで漫才を盛り上げる盛山さんのコンビである。

このコンビは盛山さんのツッコミのワードに高いウエイトが置かれている。「おっ確(おっさん確定)」「あたおか(頭おかしい)」というようなオリジナルの略称でのツッコミがしばしば登場するのだが、これに病みつきになってしまう。このツッコミで、然るべき箇所でどれだけの拍手笑いが取れるか?注目だ。

またツッコミがハマればこのオリジナルワードが世間で流行ったり、バラエティ番組のオファーが増えるかもしれない。M-1後、彼らを全国区のバラエティで見られることを期待する。


素人目に見て気になった点といえば、ローテンションなボケのリリーさんが微妙に盛山さんと目を合わせる回数が少ないところと、盛山さんの鼻にかかった声か。


お互いのことを信頼し、認め合っているコンビは漫才中に目を合わせる回数が多いような気がする。これが意外と大事で、お客さんを安心させる「漫才の温度」を作る要素の一つになると私は考えている。特に見取り図のリリーさんのような淡々とした芸風の人ほど、温度が無いように見えやすい。だから、この芸風はそのまま変えず、でも盛山さんのツッコミに思わず少し笑ってしまうとか、相方を信頼しているようなところがちょっぴり垣間見えたら、もっと漫才に温かみが生まれて、愛されるコンビになるかも?と思った。

そして盛山さんの声なのだが、初めて聞いた時、鼻にかかっているこの特徴的な声をうまく使うのはなかなか難しいのではないかと直感した。ワードそのものはもちろんだがこの声と言い方がどれだけハマるかは当日のコンディション次第。



2851 かまいたち

キングオブコント2017優勝。

昨年の「怪談」ネタはめちゃくちゃ面白かったのだが、大吉先生がラジオで仰っていたように「卍のタトゥーの大男」というフレーズがハマりきっておらず、惜しくも最終決戦へ進むことができなかった。実際私自身も後日ネタを繰り返し見ていくうちに面白さが増幅していったので、初見では最大限に笑えなかったところがあった。

私は準決勝を見に行くことができなかったためよく分かっていないのだが今最も仕上がっている「タイムマシン」のネタがあるらしい?当日は初見で楽しみたい。


技術に関しては申し分無いし、優勝候補の和牛の漫才と比較すると、「上手さ」を感じさせない段階にまで到達しているのはかまいたちの方ではないかと思う。(和牛の場合は漫才コントであり役に入っての掛け合いなので上手さ・凄さが見えやすいというのもある)

昨年審査員の中川家・礼二がコメントしていた「尻上がりに盛り上がっていく構成」も素晴らしい。濱家さんのツッコミが徐々にヒートアップして行く様は見る者の魂を揺さぶる。最終決戦で勝ち切る、強い印象を残す力も備えているのではないか?

また、かまいたちの漫才で他のファイナリストと比べ凄いと思うのは、ボケ発信の笑いが多いことだ。一般的にツッコミのフレーズや「ツッコミボケ」に重きを置く場合、ボケは直後のツッコミへの単なるフリになっていることが多い。おそらくそういう形式の漫才の方が圧倒的に作り易い。ボケの段階でひと笑い取れると当然手数は増え、有利になる。

コントでは濱家さんが「フリ」山内さんが「リアクション(ツッコミ)」の分担になっていることもあり、あらゆる角度からアプローチする柔軟性が感じられる。


そして、彼らの漫才を見ていると仲の良さというか、お互いのことを信頼しているのがひしひしと伝わってくる。長いこと二人でやってきているからというのもあるだろうが、お客さんに「ずっとネタを見ていたい」と思わせる温かい空気と安心感がそこにはあるのだ。

(※実際に濱家さんはネタ作り担当山内さんのことをすごく好いているし尊敬している)


正直私にはかまいたちに関して批判的なコメントをする余地がなく、かまいたちが敗れるとすればそれはネタ選びや当日のコンディション、限りなく「運」の問題になってくるのではと思ってしまう。

昨年のような「ボケのワードがハマらない」事態が起こらなければ優勝も十分にあり得るコンビである。



843 スーパーマラドーナ

決勝進出4回目。2016年には最終決戦まで進出、和牛に次ぐ優勝候補か。

ガッチリとした体型で強面のツッコミ・武智さんと、色が白く線の細いボケ・田中さんという対照的な見た目が特徴のコンビだ。一人で漫才コントを進めながらボケ続ける田中さんに外から武智さんがバンバンつっこんでいく。

このコンビはどちらかというと王道の漫才であるが、よく見ると笑いの数を増やす仕掛けがきちんと施されている。

以前、雑誌「漫才ブルータス」でも取り上げられていた、「ボケのアイドリング」である。

基本的に一人で話を進める田中さんはツッコまれても耳を貸さず、動き続けている。これがボケのアイドリングと言われるもので、一度ウケた余韻を残したまま次のボケまで持っていくことができる。これによってネタ中のお客さんの笑いのボルテージ(?)を高い状態に保ちやすくなるのだ。


今年がラストイヤーということでネタ作成担当の武智さんは並並ならぬ思いでこの大会に臨んでいる。10月頃までに作ったネタを全部ボツにするという暴挙に出たらしく、準決勝の直前までネタが出来上がらなかったのだそうだ。また今回は、田中さんが一人で喋るのをメインとした構成から掛け合いを重視したスタイルに変更したとも言っており、今までにない新しいスーパーマラドーナが見られるかもしれないと期待が膨らむ。

ネタが直前に仕上がったにも関わらず圧巻の出来栄えだったと評価の高い準決勝の様子を聞いていても、最終決戦進出の可能性はかなり高いのではないか。しかし和牛同様インパクトに欠けるか。最後に勝ち切る力があるかは微妙かもしれない…?


泣いても笑ってもこれで最後、武智さんの熱い想いが報われることを祈る。



3933 ジャルジャル

決勝常連組。

彼らの漫才はとにかく独創的で前衛的。昨年の「ピンポンパンゲーム」がまさにそのわかりやすい例で、彼らの魅力がこの斬新なネタ設定にあることは確かだ。しかし、どうしてもこの「まったく見たことがない漫才」を受け入れられない審査員もいるし、他のコンビと題材やスタイルがかけ離れすぎて、比較して点数をつけるのが非常に難しい。

中には笑い飯のスピリッツを受け継いだかのようなWボケのネタもあるのだが、ここ最近で披露しているジャルジャルの漫才にはもはやボケ・ツッコミの概念すらない。

まるで仲良し男子高校生が休み時間に遊んでいるのを見せられているような……二人の楽しそうな空気感にお客さんは巻き込まれて、ついつい笑ってしまう。


で、私が思うに、彼らは自分たちのネタ(独創性)に対するプライドが並外れて高く、「自分たちらしさ」を物凄く大事にしている。自分たちが納得のいくネタ、楽しんでできるネタを第一に掲げていて、賞レースとなればなおさらのことだ。この高いプライドが問題なのである。

もちろん「自分たちらしい漫才で勝つ」ことに越したことはないが、現段階では(彼らの実力だけでなく審査員の価値観にも問題があって)正直難しい。よく言えば「時代が追いついていない」悪く言えば「意味がわからない」と言ったところか。このことは独創的な漫才をするコンビ全般に言える。


「自分たちらしさ」と「勝てるネタ」の折り合いをどこまでつけられるか。


最近ではTHE MANZAI2017で披露していた「自己紹介ギャグ」のネタなんかは比較的分かりやすくて面白いから、「ピンポンパンゲーム」よりも賞レースで受けるのでは?と思うが、それは彼らのプライドが許さないのだろう……


掛け合いのテンポ感や声の調子といった表現における基礎技能は他の常連勢とさほど変わらない。今年の予選で披露している「国名分けっこ」のネタは、昨年の「ピンポンパンゲーム」と完全に同じ路線だ。彼らはどういうわけか、「よくこれ間違えずにできるね!さぞかしたくさん練習したんだろうね〜!」と思わせるような、言葉とリズムで遊ぶネタに凝っている。去年とスタイルを変えずに行くなら上位に食い込むのは厳しいかと思うが、彼らなりのアップデートをしてくるのか。

M-1ラストイヤー、彼らが見せる涙が今年はどんな意味を持つのか、非常に楽しみである。



919 トム・ブラウン

決勝初出場。ファイナリストの中で唯一の「非・吉本芸人(ケイダッシュステージ)」。

最近は地下ライブに通うのをサボっているため、恥ずかしながら今年のM-1で初めてその存在を知りました。

地下芸人らしさ満載、粗さ剥き出しの漫才はお笑いファンを温かい気持ちにさせてくれる。

決勝に進出するだけでも大きな意味を持つ彼らに関しては、技術云々よりいかに爪痕を残すかが問題だと私は思う。過去に無名ながら決勝に進出し、強いインパクトを残して翌年にブレイクしたメイプル超合金やカミナリに続けるか?

この二組はブレイクしたこと自体も凄いが、メディア露出が増えていくうちポテンシャルの高さにも驚かされた。

メイプル超合金は、カズレーザーさんの人間性だ。彼は常に自然体で、自分を良く見せようと繕ったりだとか目上の人に萎縮するというようなことがない。自分に対する絶対的な自信からくる肝の据わった態度はこれまでの若手芸人のイメージを覆すもので、世間の注目を集めた。また、学歴や読書量からもわかる通り、言語力が抜群に高い。時折、一般の人間はもちろんだが、話芸のスペシャリストであるベテランの芸人でもなかなか出てこないような表現や言い回しを叩きつけてくることがある。これに視聴者は心を奪われるのだ。

カミナリは、たくみさんのタレントとしての可愛らしさとカンの良さだ。漫才のスタイルこそ頭を強く叩く豪快なものであったが、彼の茨城訛りとにこやかな表情は、可愛さといじりやすさを感じさせた。トーク番組ではMCや先輩芸人が要求するコメントを察知して、当意即妙に返す力がある。テレビの出演回数が増えるほどその精度は上がっていき、ゴッドタンやIPPONグランプリといった人気バラエティ番組にも出演。周りのベテラン芸人にも引けを取らない活躍ぶりであった。


漫才の日本一を決める大会へのコメントとして、漫才そのものの話から外れている点は承知だが……トム・ブラウンに現在のバラエティにハマるだけのポテンシャルがあるのか、ここを楽しみにしたい。

とはいえ、まずは決勝の舞台での漫才を成功させることだ。本人も「三振かホームラン」と言っており、かなり変化球的なネタだが、どうにかある程度はハマってほしい。昨年のマヂカルラブリーのように「面白くない」烙印を押されるようなことになると地下芸人としてとても辛い…。

個人の意見としては、少なくとも最終決戦までは漫才の技術が高いコンビに順当に報われてほしいという気持ちがあるので、最終決戦進出の可能性は低いと予想する。

あと、彼らがトップバッターになると色々と丸くおさまるかもしれない。


2077 ギャロップ

決勝初進出。関西では彼らのことを知らない人はいないというほど知名度が高いとのことなのだが、関東での知名度はいまいち低い。10代の私がなんとなく記憶に残っているのはレッドカーペット?か何かに出てネタをやっているところ、アメトーークで毛利さんがいじられていたところくらいであった。

結成15年とあって、もちろん漫才の安定感は抜群。ボケの林さんのハゲを馬鹿にするやりとりがよく登場するが、それだけに頼らず畳み掛けるようにボケをぶつけてくる。


Youtubeの動画だけで芸人さんを推し量るのは極めて愚かなことだ。これは、贔屓にしているコンビがいる人なら誰でもわかると思う。

しかしあくまで参考、参考までに過去のネタ映像を巡回し、今年の準々決勝の漫才と比べてみると……明らかに面白くなっている。というのも、かつてのハゲいじりを軸としたネタが改良されて、いじりのウエイトを落とし、効果的に話題に出すようになっていた。身体的特徴を露骨にイジる芸に萎えてしまうお客さんでも楽しめる漫才にパワーアップしていた。


お笑いのコアなファンは、ハゲてるだとかブサイクだとかそういった身体的な特徴をイジるような笑いには安易に靡かない。むしろ私なんかは、(アイドルみたいに人気の芸人に比べて)ビジュアル的なハンデを抱える人にこそ本物の話芸の実力で捩じ伏せて欲しいと思う。


ボケ数やテンポ感、ツッコミの質などは十分良いが、如何せん初の決勝だ。

この緊張感を過去に経験し、その上でネタを仕上げ、万全の体制を整えてきているコンビとの差は否めない。最初で最後の決勝大会、全力を出し切り悔いなく締めくくってほしい。


敗者復活についてはすみません、時間がないので書くのをやめます。

可能性が高いと思うのはミキとプラス・マイナスかな。



最後に、最終決戦進出者と優勝の予想をいくつか出しておきます。

①保守的な予想

和牛

かまいたち(優勝)

スーパーマラドーナ


②かなり攻めた予想

和牛

ゆにばーす(優勝)

敗者復活


③私の願望

和牛

スーパーマラドーナ(優勝)

ジャルジャル


さあ、いよいよ明日。漫才師が最も輝く瞬間。最高のパフォーマンスができますように!






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