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M-1グランプリ2018、和牛は優勝できるのか?

  • 執筆者の写真: ヒジカタ
    ヒジカタ
  • 2018年11月29日
  • 読了時間: 5分

更新日:2018年12月8日


今年もこの季節がやってきました。一年で最も漫才師が輝く瞬間、M-1グランプリ。

出揃ったファイナリストについて一組ずつ感想を述べていくつもりだったのですが、和牛についての文章が思いの外長くなったので単独で記事にしようと思います。去年のM-1のネタ動画YouTubeに落ちてたらリンク貼ろうと思ったんですが、なかったのでアマゾンプライムとかで見てください。


エントリーNo.1206 和牛

決勝進出4回目。一昨年、去年と二年連続の準優勝であることから、優勝最有力候補との呼び声も高い。


実際、和牛はまじですごいと思う。毎年見る度にネタの完成度が上がっているし、特に去年の一本目「ウエディングプランナー」のネタは台本の構成も、喋りの技術においても最高級の仕上がりだったと言って良い。はじめに下地を作り、同じ行程を二周することで伏線を回収していくスタイルの漫才。あのテンポ感を出すには極めて高度な技術を要すると思う。


コンビバランスもとても良くて、ネタは基本的にはボケの水田さんが書いているようだが、川西さんのツッコミ(最近はツッコミボケっぽくもある)もめちゃくちゃ優秀。よく見るとネタ中の表情もすごく変わるし、ネタの導入からまあ〜流暢に喋り出すんだけど、その様がなんだか噺家さんのようで噛んだりする気配を感じさせない。安心して聞いていられる。

コンビのネタ書いてない方はポンコツ扱いされることも多いけれど、このコンビは二人とも能力が高いのが強みだなと思う。今年こそ優勝することができるのだろうか?


M-1の決勝は、一本目の審査で点数の高い上位三組が最終決戦に進出して二本目を披露、三組のうち最も優勝にふさわしい漫才を審査員が一人ずつ選び、最も票数が多いコンビが優勝、という方法を取っている。


一本目の審査では、審査員の好みによって採点傾向の違いはあれど、基本的には優秀な漫才は順当に合計点が高くなる。優秀とは、具体的には、安定感やテンポ、セリフの言い方、表情など、表現の技術の高さ。また台本が所謂「競技漫才」に相応しいものになっているかという点だ。賞レースで披露するネタのセオリー(ボケ数が多い、下ネタがないetc)に則ったものが望ましいだろう。


最終決戦の審査では点数をつけない。技術の高さを数字で比較することがないから、優勝に相応しい一組を選ぶとなると、当然審査員の好みも大きく基準に入ってくる。(そもそも上位三組に入っている時点で技術は十分に高いし)むしろ好みがほとんどなのではないか。

最も良い一組に選ばれるには、「こいつらは頭一つ出てる!」と思わせる「爆発力」「破壊力」のある漫才で、審査員の心をグッと掴まなければならない。審査員というひとりの人間の「心」に訴えかけなければいけないのだ。


一本目は「理性による審査」、

二本目は「感性による審査」なのかも、とちょっと思った。


和牛の漫才は面白い。台本も掛け合いも素晴らしいと思う。

しかし、審査員が心動かされたのは銀シャリであり、とろサーモンであった。


クラスで一番勉強ができて、まじめで、人望の厚い女の子がいる。

その子がいい子だということは担任の先生もクラスのみんなも知っている。

けれども、担任の先生に一番気に入られているのは、勉強はイマイチでちょっと手のかかるギャルっぽい子であり、クラスの男子たちが惚れるのは、突如転校してきたミステリアスな女の子であったりするのだ。例えるなら、こんな話だ。


また、賞レースは、決勝大会の出場回数が多くなるにつれ勝ちにくくなる。彼らが面白いということを知っているからこそ、「もっとすごいネタができるのでは」と期待されてしまい、初出場の(無名の)コンビより高いレベルのものを求められてしまうのである。最後に必要となる「爆発力」においても、初見の芸人には新鮮味≒衝撃という点で劣りやすい。

技術が高く優等生的な漫才の和牛がなぜ優勝できないのかと考えた時、やはり、最後に勝ち切る「爆発力」に欠けていたのかなと思っている。


先日、Twitterで仲良くしている方に立川志らくさんのNHKの賞レースでのコメントのことを教えてもらった。「上手さを客に感じさせてはならない」とのことだった(立川志らくの2018年10月22日のツイートを参照)。


この言葉が私には刺さりまくった。

素人の私は、上手い漫才=いい漫才だと思っていた。というか、一般の視聴者のほとんどがそうだと思う。

去年のM-1のあと、「とろサーモンより和牛の方が面白かったじゃん」と審査に文句を垂れる人が続出したのも、和牛は玄人受けしないのかな?とぼんやり考えていたのも、こういう理由だ、多分。

審査員だって長いことお笑いに携わってきたプロだ。相当の覚悟を持って審査している。(とりあえずM-1に限って言えばの話だが。)そんな審査員の出した答えに素人がああだこうだいうのは野暮だから、私は全てを受け止めたい。


「上手さ」を感じさせず、「いいなあ」と思わせる、これはものすごく難しいことだ。(システムでなく)ボケとツッコミの掛け合いの王道漫才で真っ向勝負するコンビはなおさらである。


私は和牛の漫才が好きだ。2回の準優勝でもすでに十分素晴らしいと思うのだが、何よりも誰よりも、彼らは優勝にこだわっている。和牛には、進化こそあれど今後も彼ららしいスタイルを曲げることなく続けていって欲しい。和牛らしい漫才で審査員の心を掴んで、優勝を勝ち取った時、ついに本当の意味で脂が乗ったと言えるのではないだろうか?




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